頭が固いと頭が柔らかい
世の中には「頭が柔らかく柔軟な考えの人」と「頭が固く凝り固まった考えの人」に大きく二つのタイプの人に分かれます。私のところによく相談に来る人達はよくこのような言葉を口にします。
「 私は頭が固いのでそんな考えは持てません 」
「 このやり方以外どうしたらいいか全くわかりません 」
「 何も思いつきません 」
考え方はその人の性格が影響している部分もありますが、頭が固い人は生まれつき頭が固いわけではありません。同じく頭が柔らかい人も生まれつき頭が柔らかいわけではありません。過去の様々な経験や習慣によって、考え方の癖がついた結果、今の自分が作り出されています。
今から考え方や行動を見直せば、少しずつでも頭を固くも柔らかくもできるのです。
「これはこうだ!」と物事を一つの側面からしか捉えることができず、人を引っ張ることができる反面、友人、同僚など、いろんな人とよく衝突していました。
学生時代の部活で主将を任されており、監督と言い争った時に
監督から「お前は“ど”がつくほど頭が固すぎる。それでは全体をみなければならない主将は務まらないよ。よく考えてから出直してきなさい。」と言われ、ものすごくショックを受けました。
そう、自分は頭が固いことは知っていましたが、自分の頭の固さを本当に自覚していなかったのです。
そして、頭を下げて「頭が固いというのがどういうことか教えてください。」と言ったら
「その質問自体、頭が固い証拠だよ。人生は長いからゆっくり考えなさい」と言われたことを今でも記憶に残っています。
そんな私でも頭が少しずつ柔らかくなり、いろいろな考えを教えてくれると今では社内でも先輩・後輩問わず相談がくるようになりました。
頭が固いとは
頭が固い人と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?
- 昔から考え方が変わらない
- 話が通じない
- 話を聞いてくれない
- 主張が強い
- 怒りっぽい
などとネガティブな面を多く想像するのではないでしょうか。
世間では一般的にいい意味では使われなていないと思います。
ここで頭が固いの意味をみてみましょう。
柔軟な考え方ができない。融通がきかない。
なんと!広辞苑無料検索にもネガティブな意味しか載っていません・・・
頭が固い人はこのような人たちだけではありません。性格も優しく、物腰も柔らかで、主張は強くなく、誰とでも気さくに話ができる人達の中にも頭が固い人たちはたくさんいます。
個人的には頭が固い人とは物事に対する考え方や捉え方が一つもしくは少ない人たちも含まれると考えています。
そのため、「人の良い面ばかりしか見えない」「悪いところを見つけられない」「褒めることしかできない」このようなことに心当たりのある人たちにも当てはまります。
頭が固いと聞くとつい、ネガティブなイメージ抱きますが、頭が固いこと、考え方が固いことは決して悪いわけではありません。見方によっては良い面も悪い面も両方持ち合わせています。
しかし、頭が固い人の多くは自分の考えを貫くあまり、相手と衝突して人間関係の面で損したり、自分の望みを叶えられなかったり、自分で自分の首を絞めていることさえあります。なんとかしたいけど、できない!と日々悩んでいる方が多いです。
頭が固い人の良い面
主張の強さから人を引っ張ることができる
自分の考えに自信を持っているため、人より自分の意見を強く主張することができます。
何人か集まって議論したときに主張の強い人に流された経験ってありませんか?
自信のある強い主張には力があります。強い主張によって、自分の意志を人一倍表明できるため、先頭に立ってチーム引っ張っていくことも大いにあります。
人の意見に影響を受けにくい
自分の考えが強いため、良い意味で周囲からの影響を受けにくいです。
そのため自分の決めたことを着実に実行し、周囲からの障害や誘惑があっても、考えを曲げずにまっすぐ進むことができます。
こだわりが強い
自分が納得しないことはしません。そのためこだわりが強い傾向にあります。
人によってこだわるところは様々ですが、例えばコーヒーはブラックでブラジルの○○産の豆がいい。車は○○社の○○タイプしか乗らない、ご飯はこの順番で食べるなど、自分なりのこだわりが存在します。
「こだわる」ということはその分野を徹底的に調べ詳しくなったり、技術を習得して極めたりすることなので、成長にはものすごく大切な要素のひとつです。
自分のルールを守る
一度自分が決めたことを人に曲げられるのも、簡単に自分で曲げるのも納得がいきません。
何かをする時にも最初から最後まで一貫性を持つため、信頼・信用されやすい一面もあります。
一度決めたことをやり遂げようと、壁にぶつかりながらも前に進みます。まじめと見られることも多いですね。
頭が固い人の悪い面
思い込みが強い
自分が持っている考えを強く信じているため固定概念が存在します。
あの人は静かなタイプ、だから仲良くなれないだろう。この仕事はこのやり方で進めるべきなどと「これはこう!」と頭の中で決めてしまうとなかなか変わることがありません。
そのため自分の固定概念とは違うことがわかると、自分は間違っていないと相手のせいにしたり、不思議がったりする傾向があります。
素直に受け入れることができない
周囲からの意見やアドバイスを素直に受け入れることができません。
受け入れてしまうと自分の考えや固定概念が間違いとなってしまうからです。
人は誰でも自分が否定されるのは嫌ですし、自分の間違いを認めたくないですよね。
そのため受け入れるまでには長い時間かかります。頭が固い人の大半に見られる傾向です。
ただし、思い込みが強いこともあるので、尊敬する人の意見は何でも聞くことができるという特徴もあります。
自分の考えを相手に押し付けがち
自分の考えに自信を持っています。
「こうするべきだよ!」「こうした方が絶対いいよ!!!」と、その考えを他の人にも強要してしまいがちです。
自分の考えが良いという自信を持っているので、相手に良いことを共有してあげたいと思っています。
しかし、相手が求めていない回答でも強要してしまい、相手が嫌がったとしても気づかないことが多いです。
人とぶつかったり、人を傷つけたりする
自分の考えに自信を持っているため、自然と主張が強くなり、相手とぶつかってしまうことが多くあります。
また、自分の考えややり方を貫き通してしまうため、自分では気づかないうちに相手を傷つけてしまうこともあります。
周りを見るのが苦手
ものの見方が外(他の人)よりも内(自分に)強く向いています。
人は誰でも自分中心に生きているものですが、頭が固い人はそれ以上に自分中心になってしまいがちです。
そのため周りをあまり見ようとしません。
また、周りを見ようとどれだけ意識をしても自分の考えが強いため、なかなか上手く周りを見ることができません。
周囲と自分が変化することが苦手
自分の中で確立されたことは得意げに進めることができますが、想定外の対応にはストレスを感じます。
自分のやり方にこだわってしまうため、柔軟な対応ができず、つまずいてしまうことが多くあります。
頭が固い人の特徴
否定することが多い
これは意見が合わない時に起こります。
頭が固い人は自分の考えが中心となっているので、意見が食い違うと相手を否定して自分の意見を主張します。
「いや」「それはない」「ありえない」など強い言葉をよく使います。時にはバカにするように笑ってくることもあります。
自分の認識を世間の認識とする
自分が分かっていることは他人もわかっている、自分ができるようになったことは同じやり方で他人もできるようになる、と思っています。
頭の中では「自分の持っている常識」=「世間一般の常識」という方程式が成り立っています。
「そんなこともわかっていないの?」「こんなこともできないの?」などの言葉をよく使います。
同じことを何度も主張する。強要する
自分の考えや意見が100%正しいと思っているため、自分の意見が通らないと何年経っても、何度でも自分の意見を主張します。
「こうすべきだ」「絶対こうした方がいいよね?」という言葉で強制的に同意を求めて来ることもあります。
考え方を広げる方法
仕事をしたり、部活をしたり、様々な人たちがいる組織に属すると必ずと言っていいほど、人間関係で問題が起きます。今何も問題が起きていなかったとしても将来には必ず人間関係で苦労することがあります。
その人たちがつまずいた時、私は必ずこのようにアドバイスをします。
これは一番基本的な方法で、誰でもすぐに今の自分とは全く違う別の考えを持つことができます。
今自分が持っている考え方を真逆にします。あなたが一つの考え方ができるということは、やり方を学び、訓練することで簡単に考えの幅を広げることができます。
自分の考えと真逆の考えを持つ
⇒「あと3分もある」
⇒「健康になるために毎日食事を必ず摂ることが必要ではない」
⇒「教育で大切なことは手取り足取り全てを教えないことだ」
⇒「この商品は100人に20人は効果を実感していない」
さて、上記の文章を見てみると真逆の考え(自分の考えを否定形にする、notをつける)にしているだけで、全く別の考え方が生まれることにお気づきでしょうか。
この方法だけでプラスにしか物事を考えられなかった人がマイナスにも物事を考えることができるようになります(その逆も同様)。
この方法でプラスとマイナスの両方の考えを持つことができるので、考えの幅が一気に広がります。
疑問を持つ
考え方を広げるもう一つの方法としては、文章をもう一段階加工する。
すなわち疑問を持ち「?」を文章につけることです。
⇒「あと3分もある」
⇒「あと3分で大丈夫か?」
⇒「毎日食事を必ず摂ることが健康ではない」
⇒「毎日食事を摂ることが健康につながるのか?断食は体にいいのか?」
⇒「教育で大切なことは手取り足取り全てを教えないことだ」
⇒「何も教えずに自ら学ばせるようにすることが教育にとって大切なことなのでは?」
⇒「この商品は100人に20人が効果を実感していない」
⇒「どんな人が効果を実感できていない?性別?年齢?使い方?思い込み?」
元ある文章に「?」をつけて疑問の文章にしてみましょう。
「?」の付け方は様々な方法があります。英語でいう「5W1H」の疑問詞を使った疑問文ですね。
この「5W1H」を用いて疑問文にしてみてください。
そうすることで考えの幅はさらに広がります。
扇子で例えてみる
扇子は扇面の地紙の部分と骨の部分からできています。
扇子で言う扇面(地紙)の部分
面のようにあらゆる考え方を持っている人
扇子で言う骨の部分
強い考えを線で何本も持っている人
自分は頭が固いから・・・と悲観的にならないでください。扇子の骨の部分を一本一本増やしていけばいいのです。正直に言いますと骨を増やすのには時間はかかります。しかし、時間をかけることによって、より太く、より強い骨が確実に増えていきます。
太くても、細くても骨が増えれば、いずれ面になります。線の集まりが面となります。強い考えすなわち強い線が集まって面になれば、丈夫な面を持てると思いませんか?
また、扇子は扇面の紙(地紙)の部分だけでも、骨の部分だけでも扇子としては成り立ちません。両方があって初めて一つの扇子として完成します。頭が柔らかい人もかたい人も組織にはどちらも大切な人材なのです。
骨を増やすために
いろいろなことに手を出してみる。
いつも同じことの繰り返しでは知識も増えなければ、考え方も変わらず、刺激もありません。
頭が固い人は新しいことや変化を受け入れることに苦手意識を持つ傾向にありますが、はまってしまえば誰よりもこだわり、極める力も持ち合わせています。
なので、今までにやったこともないことにもチャレンジしましょう。
仕事であれば、営業・経理・法務・広報・マーケティングなど他の部署がやっている仕事
趣味であれば、キャンプ・音楽・ゴルフ・ヨガ・ランニングなど自分の趣味ではないもの
自分にはまるものが見つかるまで、手当たり次第にチャレンジしてみることもいいかもしれません。
経験値を増やす
身体面・精神面ともに今ある自分は過去が大きな影響を与えており、過去の経験から成り立っているといっても過言ではないでしょう。
知ること、経験することで考えや受け入れの幅は大きく広がります。
食わず嫌いより、食べてから嫌いと決めてください。見た目から嫌いと思っていても、食べたら好きになることもあります。
「経験に勝るものはなし」と言われているくらい経験の与える影響は多いです。
耳を傾ける
相手の考えを受け入れることは容易なことではありません。まずは耳を傾けて聞くところから始めてください。
10の考えを聞いた中で1つ自分が受け入れることができる考えがあれば十分です。優秀な人が10を聞いて10を受け入れることができるなら、100の考えを聞いたら追いつきます。耳を傾けなければ始まりません。
1つ2つと受け入れることを増やしましょう。
疑う
自分を疑う。相手を疑う。情報を疑う。ルールやマニュアルを疑う。常識を疑う。
疑いを向けようと思えばどんなことにでも疑うことはできます。始めはどんな項目からでもいいので、疑うことをしてください。一番のおススメは自分を疑うことです。頭が固い人は自分の考えが正しいと思っていることが良い方向にも悪い方向にも進みます。良い方向に進んでいる時は問題ありません。悪い方向に進んだときは自分の意見を主張し続けるのではなく、自分を疑ってみてください。
始めは見えないかもしれませんが、疑うことを続ければ、悪い原因が見えてきます。
相手の立場になってみる。
常に自分に向かっている矢印を外に向けてください。人の心を読める人は世の中にはほとんどいません。
相手の立場に立った場合どうだろうと仮説を立てて考える癖をつけましょう。相手の心は読めなくても、相手の心を想像することができます。この考えを繰り返すことによって相手と衝突する回数も減ってきます。
まとめ
- 頭の固さ、柔らかさは後天的なもので、変えることができる
- まずは真逆に考えてみる
- 扇子の骨のように強い考えを増やす
過去の自分は誰にも変えることができませんが、未来の自分は変えることできます。
「頭が固いから一つの考え方しかできない」いいえ、違います。「ひとつの強い考え方をすでに持っている」のです。
考え方の方向を変えるだけで扇子の骨のように多くの考えを持てるのです。
まずは真逆に考えることから始めてみてください。これで一つステップアップすることができると思います。